大阪の保健所が連日連夜の対応 現場の悲鳴「救える命救えない」 府職労の小松康則委員長に聞く

新型コロナウイルス感染の急拡大で、首都圏に続いて大阪・京都・兵庫、愛知、福岡など7府県にも緊急事態宣言が出された。崩壊の危機にあるのは医療現場だけではない。コロナ対応の最前線に立つ保健所も業務がひっ迫している。特に人口10万人あたりの職員数が全国最少の大阪府はより深刻で、「大阪府関係職員労働組合」(大阪府職労)委員長の小松康則さん(49)のもとには現場から悲痛な訴えが寄せられている。(矢野宏)

大阪府職労では「保健師、保健所職員を増やしてほしい」というオンライン署名を呼びかけてきた。小松さんは保健師らの声をツイッターで発信しており、年末年始にも切実な声が寄せられたという。

〈大みそかも出勤。出勤者全員で頑張ったけど、夕方に陽性者が一気に増え、電話対応で不安に応え、入院調整、宿泊療養の説明などの対応が続き、帰路についたのは新年を迎えてから。元日も朝から出勤。年末年始関係なく陽性者の発生、症状の悪化などは続く。限られた人数で対応し、翌日への引き継ぎ事項を整理し終えた時には深夜3時を過ぎていました〉

〈大みそかに出勤し、帰宅したのは深夜0時過ぎ。ようやく眠りについた深夜3時にコールセンター経由で在宅療養中に症状急変と連絡あり対応。そして2日も出勤。確実に土日勤務よりもきつい年末年始〉

首都圏の4人の知事が首相官邸を訪れ、緊急事態宣言の発令を要請した1月4日、大阪府の吉村洋文知事は「府は感染拡大が抑えられている」と言い切った。だが、6日に560人、7日に607人の新規感染者が確認され、緊急事態宣言を要請すると言い出した。

「現場の意見を聞かずに進めるからだ」と小松さんは指摘する。「維新府政になってから何事もトップダウンで、現場の声を聞こうとしません。スピード感はあるかもしれませんが、府民の声を聞いているのは現場の職員たちです。その声を聞かずに政策を決めても対策は不十分です」

残業100時間超

〈正月休み明けからものすごい数の電話。そこに連日二けたの陽性者の発生届があり、休む間もなく残業が続いている。宿泊療養ホテルに入院先もすぐには調整がつかず、対応に時間がかかる〉

〈過去最多560人の陽性者。23時過ぎ、何とか終電のあるうちに職場を出て帰路につく。深夜3時前布団に入った頃、入院調整の電話が入り対応。終わったのは4時前。朝からは本来業務の訪問の予定があり休めない〉

コロナに関する保健所の業務は、感染の疑いがある人からの電話相談をはじめ、PCR検査の受け付け、陽性と診断された人の入院や宿泊療養、あるいは自宅療養の調整、感染者の感染経路や濃厚接触者を調査する「積極的疫学調査」、症状が急変した人への対応など、多岐にわたっている。

「昨年4月以降、保健師や保健所の職員は連日連夜の残業で、多い人は毎月100時間を超えており、『過酷』『悲惨』です。深夜であろうが急変や差し迫った相談の電話が入ると、自宅から駆けつけます。気がつくと子どもが学校へ行っていなかったという人もいました。それでも過労死ラインを超えて残業している職員を見ていると、子どもを残してでも役立ちたいと頑張っているのです」

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