検察庁法改正案 批判高まり今国会見送りへ

検察官の定年を延長する検察庁法改正案をめぐり、元検事総長らが反対する異例の意見書を法務省に提出。ツイッター上でも多くの著名人を巻き込んだ抗議の投稿が相次ぎ、ネットデモという様相を見せている。政府は5月18日、今国会での成立を見送る方向で調整に入った。(矢野宏)

発端は1月末、安倍政権が東京高検の黒川弘務検事長(63)の定年を半年延長する閣議決定を突如として行ったこと。検察官の定年は検察庁法で「検事総長は65歳、それ以外の検察官は63歳」と決められており、延長規定はない。検察官は「準司法官」として政治家の犯罪にも切り込む強大な権限を持つため、一般の国家公務員のような定年延長は適用しないと解釈されてきた。だが、安倍政権は国家公務員法の定年延長制度を適用する法解釈を打ち出した。

黒川氏は2月8日に63歳で定年を迎える予定だったが、半年の続投が決まったことで検事総長への道が開けた。現職の稲田伸夫氏(63)が2年で総長交代との慣例に従えば、7月が交代時期となるからだ。

新聞うずみ火3月号「検察人事に『禁じ手』」で、時事通信解説委員の山田恵資さんは「稲田氏の後任は黒川氏ではなく、同期で名古屋高検の林真琴検事長を就任させる案が有力だったが、官邸が黒川氏を次期総長に就任させる布石を打った。黒川氏は菅官房長官の信頼を得て、官邸とのパイプ役を一手に担うなど、政権にはなくてはならない存在だった」と語っていた。 現職閣僚だった甘利明氏の現金授受疑惑、下村博文元文科相の加計学園からの現金受領をめぐる政治資金規正法違反、さらには森友学園をめぐる公文書改ざん事件で佐川宣寿元理財局長ら財務官僚らの立件がいずれも見送られた。そのたびに、法務省の主要ポストにいた黒川氏と政権の癒着が指摘されてきた。

1

2

関連記事



ページ上部へ戻る