プーチン大統領の狙いは…「熊取6人組」今中哲二さんが語る「戦争と原発」(中)

原子力の安全性を問い続けた「熊取6人組」の一人、旧京大原子炉実験所(現京大複合原子力科学研究所)研究員の今中哲二さんはチェルノブイリ原発事故の調査でウクライナと関係が深い。「新聞うずみ火」主催の市民講座で「戦争と原発 ウクライナとロシア、チェルノブイリ原発」と題して講演した。(新聞うずみ火 矢野宏)

 

なぜ、プーチン大統領は侵攻に踏み切ったのか。

今中さんは、プーチン大統領が昨年7月に発表した「ロシア人とウクライナ人の歴史的統一性について」と題した論文の中に手がかりがあると指摘する。

「冒頭に『ロシア人とウクライナ人は同じ民族であり、一体である。これらが私の信念である』と書かれており、『ウクライナの本物の主権は、ロシアとのパートナーシップによってこそ可能である。私たちの親族関係は世代から世代へと受け継がれている。私たちは一緒に、これまでも、そしてこれからも、より強く、より成功する。すなわち、私たちは一つの民族だ』と結ばれています。プーチン大統領はロシア帝国やソ連の復活を目指しており、ウクライナを属国にするつもりでしょう」

「戦争と原発」について話す今中さん=3月19日、大阪市北区(撮影・粟野仁雄さん)

これまでウクライナを訪ねた今中さんが印象的だったと振り返ったのが2004年11月の「オレンジ革命」だった。

毒物を盛られたとの噂が流れた親欧米派のユシチェンコ氏と親露派のヤヌコービッチとの大統領選があった。当初、「ヤヌコービッチ氏勝利」と選挙結果が伝えられたが、「選挙違反だ」と市民らが独立広場(マイダン・ネザレージュノスチ)で抗議の声を上げた。

「広場に20万人もの市民が集まっていました。炊き出しも出ていた。警官や軍隊からの暴力もないし、酔っ払いもいなかったのが驚きでした」

憲法裁判所が選挙無効と判断し、再選挙の結果、ユシチェンコ氏が勝利する。

1991年にソ連から独立したウクライナの政権は、親欧米と親ロシアの間で揺れてきた。ドンバス地域(ドネツク州とルガンスク州)があるウクライナの東部は工業地帯。西側は親欧米の構図だ。言語を見ても西側はウクライナ語で、東側がロシア語だ。

参考記事:「熊取6人組」今中哲二さんが語る「戦争と原発」(上)ロシア侵攻 原発制圧の狙い

ユシチェンコ氏の後、10年の大統領選でヤヌコービッチ氏が勝利したが、14年にはロシア寄りの政策に不満を持った市民が再び独立広場に集まった。世にいう「マイダン革命」。流血騒ぎの末、ヤヌコービッチ氏が逃げ出したため、大統領に就任した親欧米のポロシェンコ氏がNATO加盟の方針を打ち出した。

ロシアのプーチン大統領は南部のクリミア半島に軍を派遣し、一方的に併合、実効支配した。同時期に、ドンバス地域で親露派の分離独立戦力による内戦が始まった。15年、ドイツのメルケル首相の尽力で「ミンスク合意」として停戦協定がまとまった。二つの州に自治権を与えることはプーチン大統領も了承したが、戦闘は断続的に続いてきた。

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