大阪朝鮮高級学校ラグビー部「花園」ベスト4 逆境とも堂々闘う

新型コロナウイルス感染拡大防止のため無観客で開催された「第100回全国高校ラグビー大会」。大阪朝鮮高級学校は、連覇を果たした桐蔭学園(神奈川)に決勝進出を阻まれたものの、10大会ぶりに4強入りした。大阪市東成区の東成朝鮮会館でパブリックビューイングが行われ、学校関係者らと一緒に観戦した。(矢野宏)

2大会ぶり11回目の出場を果たした大阪朝高。花園では過去ベスト4が最高で、2回とも準決勝で桐蔭学園に敗れている。雪辱を期して臨んだ1月5日の準決勝。フォワードの平均体重で100キロ対91キロという差がありながら、前半は互角の展開だった。

16分、先制トライを許した大阪朝高は敵陣に深く攻め入り、ラインアウトからのモールを押し込む。スクラムハーフの李錦寿(リ・クンス)選手(3年)が右に持ち出し、トライを決めた。「やったー!」「いいぞ!」。ゴールキックも決めて7対5と逆転すると、会場は歓声に包まれた。

さらに前半終了間際、ラックから持ち出した李選手からパスを受け取ったスタンドオフの金侑悟(キム・ユオ)選手(3年)が右隅に同点トライ。「よっしゃ、いける」。「中大阪朝鮮初級学校とともに歩む会」の中山茂さん(68)は両手を突き上げた。

「『魂のタックル』に多彩な攻撃が加わった。権晶秀(コン・ジョンス)監督が『単調な試合運びでは上は望めない』と語っていたが、1試合ごと成長しています」

桐蔭学園ラグビー部員102人に対し、大阪朝高は39人。私が初めて大阪朝高を取材した1990年には1000人を超えていた生徒数は今年度210人。5分の1にまで減っていた。背景には、保護者の負担増がある。

大阪府・市が朝鮮学校を運営する大阪朝鮮学園への補助金が2012年、当時の松井一郎・大阪府知事と橋下徹・大阪市長によってカットされた。朝鮮学校は学校教育法第1条で定める「正規の学校」ではなく「各種学校」扱いのため、国庫からの補助はない。

さらに追い打ちをかけたのが高校無償化からの排除だ。大阪朝高が取り消しを求めた裁判は、大阪地裁では原告の請求が認められたが、高裁で逆転敗訴。19年8月に最高裁で敗訴が確定した。

中山さんは「私の知り合いにも中学校までは朝鮮学校に通わせ、高校からは日本の学校に通わせた人が数人います」と話す。


試合は後半に入り、大阪朝高はたて続けに4連続トライを奪われ、12対40でノーサイド。雪辱はならなかった。
会場にもれたため息は、ねぎらいの拍手に変わった。「よくやった」「胸を張れ」。
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)東成支部の任宗孝(イム・ジョンヒョ)委員長(59)は「選手たちには『ご苦労さん』と言ってやりたい。この10年の逆境の中で学校や後輩のことを考えて決めたスローガン『使命』を十分に果たした。正々堂々と闘ってくれた。立派です」と語った。

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