職員は手当なし
ここにきて、十三市民病院内に波紋を投げかけているのが、大阪府が医療従事者などを支援するために設置した「新型コロナウイルス助け合い基金」だ。
10億円を超える申し込みがあり、吉村知事は7日、コロナ病院の医療従事者に20万円、軽症者を受け入れている宿泊施設の従業員やPCR検査に携わる医療スタッフには10万円を支給する方針を示した。
さらに、吉村知事は「防護服を着て感染者の治療に当たる医師や看護師」「4月末を一区切りとして5回以上患者と接触した人」などと細かな条件を言い出した。
これに対して、十三市民病院で委託職員として働く女性は「病院には医師や看護師だけが働いているのではありません」と切り出し、こう訴える。
「病院は委託や派遣で成り立っているのが実情。少しでもいいから職員すべてに『危険手当』を払ってほしい。コロナウイルスは職業差別をしません。この病院に一歩足を踏み入れて働いている以上、同じリスクにさらされているのですから」
維新行政のツケ
そもそも、大阪の公的医療を解体したのは誰か。いざという時のことを考えず、マスクや防護服を備蓄しなかったのは誰の責任なのか。
2008年、大阪府知事に当選した橋下徹氏が推進したのは病院の統廃合であり、予算の大幅削減だった。「二重行政のムダを解消する」と言って、府立病院と市立病院を統合し、跡地を民間に売却した。
福祉的な医療機能を兼ね備えていた大阪市立住吉市民病院は現地で建て替え、120床の小児・周産期医療に特化した病院にする計画だった。ところが、11年に橋下氏が市長に就任すると、住吉区内に府立医療センターがあることを理由に廃止・統合を発表した。「建て替えると45億~57億円かかるが、廃止・統合すれば30億円」との説明だったが、後日、廃止・統合すれば市の負担だけで60億~83億円だったことが判明している。
厚生労働省の「医療施設調査」によると、人口10万人に対する病院の病床数は、橋下氏が知事になる前の07年には1257・8床だったが、10年後の17年は1211・8床と46床減らし、全国ワースト15に順位を落とした。
公衆衛生面での切り捨ても問題となっている。
かつて大阪府と大阪市にあった衛生研究所を17年に統合、効率化を目的とする独立行政法人化した。府関係職員労働組合によると、「公衆衛生を担当する府の職員と保健師の数は全国ワースト2位で、このままでは府民の命と安全を守れない」として、保健所の機能強化と拡充を訴えている。
松井市長が「雨ガッパを送れ」と呼びかけたり、吉村知事が「大阪モデル」「コロナ追跡システム」などを次々と打ち出すのは維新が公的医療を崩壊させた責任から目をそらすためではないのか……。十三市民病院の委託職員からそんな声も聞こえてきた。