2年前の第1波から保健所の人員不足が指摘され、現場から過労死ラインの残業時間が強いられている現状が報告されてきたにもかかわらず、教訓は生かされていない。その元凶は「保健師不足」と、現場を混乱させる「トップダウン」だ。吉村知事は「現場の声を聞いて」という声に耳を傾けようともしない。(新聞うずみ火 矢野宏、栗原佳子)
◆潜在保健師活用を
大阪市保健所の元保健師、亀岡照子さん(70)は「保健所は命と健康を守る砦だ」と、後輩に伝えてきたが、「コロナの影響でDVや虐待、小学校の高学年から高校生ぐらいの自殺も増えています。さらには30、40代の母親の自殺も。認知症、うつも増えている。それらのケアがコロナの後回しにされている」と手が回らない現状を嘆く。
「2000年に大阪市の保健所が一つになり、そのあとに維新が誕生しているから、保健所をつぶしたわけではないが、保健師を区役所のいろんな部署に行かせた。保健所の現場や地域を担当する保健師は減らされています。平均2万人を1人で担当しているのが現状です」
大阪市では1928年に日本で初めて『小児保健所』が開設されるなど、公衆衛生の先進的な活動をしてきた歴史があるという。94年に地域保健法が制定され、全国の保健所の削減が進むなか、95年には「保健所を守る大阪市民の会」も結成された。亀岡さんもメンバーの一人で、大阪市との交渉を続けている。「24区全てに保健所を作れとはいいませんが、8カ所くらいは必要です」と力説する。
さらに、「潜在的な保健師を使うべきです。保健師の退職者会に声をかけてこない。幅広く声をかけて保健師を応援する体制をなぜつくらないのか」と訴え、消防署を例に引いた。
「消防署にしてもいつも火事があるわけでないし、いつも救急隊が出払っているわけでもない。消防署員は防火教育に行ったり、住民に防災訓練を指導したりしている。普段、地道にやっていることが、有事に備えることになるのです。政治家にはそこを考えてほしい。100%ぎりぎりでやっていたら、何かあったら絶対に無理。2割ぐらいの余裕をもった人事配置を行うべきです」