「大阪都構想」住民投票 市民サービス低下する 

このように、「大阪都構想」は制度の中身でも極めて問題の大きいものですが、さらに現在の新型コロナによる影響が重大なものとなります。多くの専門家が指摘するように、このウイルスとの戦いは長期戦になる可能性があります。現時点でもわかるのは、今後も感染の波が襲ってくるたびに、市民生活や事業活動は停滞を余儀なくされること。

打ち出の小槌のごとく扱われてきたインバウンドによる経済振興もこれまでのようにはいかないでしょう。これらによる税収の減少がどのぐらいに上るのかは全く明らかにされていません。他方では、これまで行政改革の名の下に削減を繰り返してきた医療や公衆衛生など市民の暮らしを守る行政機能の再拡充が求められるでしょう。子どもたちの教育環境の整備も喫緊の課題です。そうなれば、大阪の自治体の財政支出も増えていく見通しになります。

府・市ともに、収入の落ち込みと支出の増加から、財政がさらに厳しくなっていくのは必至です。その中で、現在やらなければならないのは、市民生活を正常に戻し、自治体が強化しなければならない行政サービスへ限られた財源・人員・技術を総動員していくことです。このような状況の中で、まさに不要不急の「大阪都構想」へ向けた取り組みを進めていくことは、あってはならないことだと考えます。

歴史が示すように、有事において民意は強さをアピールする政治に引きつけられやすくなります。そこでは市民による理性的な判断に陰りが出てきます。新型コロナという有事に乗じた住民投票はその意味でも行うべきではありません。
(立命館大教授 森裕之)

 

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