「夜間中学」放送から50年 療養中の兄励ます 向学心に燃える母

「兄の容態が良くないとの連絡が入りました。これから上京します」
大阪市東成区の会社員、金春実さん(60)から連絡が入った。在日2世の金さんは7人きょうだいの末娘。上の6人は男ばかりで、66歳の5男が胆管がんを患い、長い闘病生活の末に東京都練馬区の自宅で療養している。
「その兄を励ましたい、せめてもの思いをかなえてあげたい」と、ファクスが届いたのは8月中旬のことだった。
〈韓日関係が正常になり、楽しく隣国同士としてお付き合いできるよう願ってやみません。実は、「新聞うずみ火」7月号に出ていた天王寺夜間中学の記事のことでお尋ねしたいことがあり、ファクスしました〉
天王寺夜間中学の記事とは、戦争や貧困などで義務教育を受けられなかった人たちが学ぶ大阪市立天王寺中学校夜間学級が創立50年を迎え、同窓会主催の「記念のつどい」が開かれた――という内容だった。

天王子夜間中学には、3年前に98歳で亡くなった金さんの母・高ジンセンさんも通って熱心に学んでいた。兄を見舞った7月末、夜間中学がテレビに取り上げられ、母も出演したという昔話に花が咲いたという。「うれしそうな兄の顔を見て、番組名もわからないのですが、オモニが映っている姿を見せてあげたいと思って……」

半世紀前のことだが、長年、夜間中学に携わっている大阪府守口市立夜間中学元教員の白井善吾さんに聞けば何か手がかりを得られるかもしれないと、7月号で紹介した連絡先を伝えたところ、事態は思いもよらぬ展開を生む。

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