維新市府政に異議あり 大阪市立高校21校の府移管 なぜ無償譲渡?(1)差し止め訴訟が山場

大阪市立の高校21校が廃止され、4月から大阪府に移管される。政令指定都市から道府県への移管は前例がない。土地・建物だけで計1500億円という巨額な市民の財産が府に無償譲渡されるのも前代未聞だ。これに対し、「無償譲渡は違法」だとして卒業生ら市民5人が市に譲渡の差し止めを求めた訴訟が大阪地裁(森鍵一裁判長)で大詰めを迎えている。1月28日の第4回口頭弁論で結審し、3月末までに判決が言い渡される見通しだ。(新聞うずみ火 栗原佳子) 

移管される学校の一つ、大阪市立工芸校。芸術分野に多くの才能を輩出してきた=大阪市阿倍野区(撮影 栗原佳子)

大阪の高校教育は1900(明治33)年に「大阪府教育十カ年計画」が策定されて以来、大阪府は普通科、大阪市は実業系中心という役割分担がなされてきた。市立の高校に商業、工業など専門学科が多いのはそのためだ。学校数も同じ政令指定都市の名古屋市の14校、横浜市、京都市、神戸市の9校と比較しても飛び抜けて多い。なのになぜ270万都市の大阪市が自前の高校教育を手放すのか。大阪でも、堺市、東大阪市、岸和田市はそれぞれ市立高校を運営している。 

 

移管をめぐる動きは2011年、大阪維新の会の松井一郎氏、橋下徹氏が府知事、市長の大阪ダブル選を制したことにはじまった。新設された府市統合本部で「二重行政」の見直しが検討され、14年には「大阪都構想」=大阪市廃止・分割を先取りするかたちで市立高校の府移管方針が決定。15年、20年に行われた「大阪都構想」の是非をめぐる住民投票はいずれも否決され、大阪市は存続したが、2度目の住民投票からわずか1カ月後の20年12月、府・市両議会で移管の関連条例案が可決した。 

 

◆議決なく市長の独断で 

住民訴訟の原告は市立工業高校の卒業生ら大阪市民5人。「市立の高校の府への無償譲渡は『市民の財産を投げ捨てる』暴挙」などとして昨年6月、「大阪市民の財産を守る会」を結成した。市に住民監査請求したが棄却され、大阪地裁に提訴した。  

 

原告がまず指摘するのは無償譲渡される不動産の巨額さだ。 

 

「大阪市立の高校の土地・建物は大阪市公有財産台帳で1500億円、市場価格では倍の3000億円とも指摘され、2031年に開業するなにわ筋線の事業費3300億円に匹敵する異常な巨額寄付」であり、「大阪市に何の見返りもないただの財産投げ捨て」だという。

参考:維新市府政に異議あり 大阪市立高校21校の府移管 なぜ無償譲渡?(2)しわ寄せは生徒に

1

2

関連記事



ページ上部へ戻る