維新市府政に異議あり 大阪市立高校21校の府移管 なぜ無償譲渡?(1)差し止め訴訟が山場

 

住民投票で二度も「大阪都構想」が退けられ、大阪市廃止の前提そのものが崩壊し「合理性がない」「民意に背いている」とも訴える。

第2回口頭弁論後の報告集会。大勢の支援者が集まった=12月17日、大阪市北区 (撮影 栗原佳子)

また、市立の高校は移管後、廃校が想定されていることも懸念する。府立の高校には「3年連続定員割れした高校は再編対象」という3年ルールがある。松井知事時代の12年に施行された府立学校条例で定められ、いわゆる「困難校」などが統廃合の対象になってきた。少子化を反映して市立の高校も生徒数が減少しており、定員割れしている学校は珍しくない。すでに 東淀、生野、泉尾の市立工業3校は移管後の統廃合対象。大阪市民の税金で整備した高校でも、廃校後の土地・建物の売却代金は大阪府の収入になる。 

 

昨年11月15日の第一回口頭弁論で原告を代表し、元生野工業高校同窓会長の綱島慶一さんが意見陳述し、「住民投票で大阪市民は大阪市を残すことを決めました。それは高校教育をも含む市の行政を残すことに他なりません。議会で高校廃止を決めたことは背任行為。高校教育、学校そのものが市民にとって重要な自治であり、その市民の権利が侵されています」と訴えた。 

その後も12月17日、1月17日とこれまで3回の口頭弁論があり、次回1月28日の第4回口頭弁論で結審する。4月の移管が決定していることから、森鍵裁判長は裁判所の職責として3月末までに判決を言い渡すと明言。論点を整理し、1月17日の法廷では訴訟の争点が主に四つ示された。 

 

1.市立高校の不動産譲渡は大阪府立高校の建設費用を大阪市に負担させたことになるのか(地方財政法27条1項、28条の2に違反するか) 

 

2.1500億円という巨額な不動産の寄付が大阪市にメリットがあるのか(「公益上の必要性」があれば寄付できるとする地方自治法232条の2に違反するか) 

 

3.大阪市議会は市立高校不動産の無償譲渡を議決したのか(地方自治法96条1項6号、寄付には条例適用か議会の議決が必要とする地方自治法237条2項に違反するか) 

 

4.市立高校不動産という巨額寄付に大阪市財産条例16条は適用できるのか――。 

大阪地裁=大阪市北区

四番目の大阪市財産条例16条は大阪市が無償譲渡の根拠としてきた規定だ。三番目の地方自治法237条2項が定めるように普通地方公共団体の寄付には「条例適用か議会の議決が必要」で、市は議決を回避する代わりに条例を選択した。それが大阪市財産条例16条「普通財産は公用または公共用に供するために特に無償とする必要がある場合に限り、国または公法人にこれを譲与することができる」だった。 

 

「特に無償とする必要がある場合」を判断する権限は市長にある。つまり松井氏だ。原告側は、今回の無償譲渡は「特に無償とする必要がある場合」には該当しないとし、市財産条例の適用は誤りであり、市長の裁量権を逸脱しているのではないかと主張する。 

一方の被告側。審理の中で、移管対象となる市立高校の土地の多くが未登記であるなど杜撰な実態も明らかになった。 

 

この住民訴訟は、市長に委任された担当局長の無償譲渡契約締結を止められるかがカギ。第4回口頭弁論は1月28日午前11時から大阪地裁1007法廷で開かれる。(続く) 

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