京都府宇治市のウトロ地区で昨年8月、7棟が全焼した火災。当初、京都府警は「漏電による失火」と発表したが、昨年末、放火の疑いで逮捕されたのが22歳の無職、有本匠吾被告だった。「韓国人への悪感情があった」と犯行動機を語った有本被告とはどんな人物なのか。法廷に現れた被告は…。(新聞うずみ火 栗原佳子)
初公判を傍聴しようと京都地裁には200人余りが並んだ。有本被告は濃いグレーのスーツ姿で入廷。髪は肩まで伸び、黙秘権を告げる裁判長に、きゃしゃな体を折り曲げるようにうなずいた。ウトロと名古屋の事件は併合審理され、有本被告は「事実として認めさせていただきます」といずれも起訴事実を認めた。
検察側は冒頭陳述で、有本被告が昨年7月、相談員をしていた病院を退職し、「無職になった劣等感からうさ晴らしをしよう、どうせなら社会から注目を浴びたいと考えた」と指摘。「前から韓国人に対して悪感情を抱いていたことから在日韓国人関連施設に火をつけようと考え」、名古屋市内の2施設に狙いを定めたとした。昨年7月24日、着火剤とライターで火をつけ、数日後には奈良県内の民団施設にも火をつけた。しかし「ニュースとして大きく扱われず物足りなさを感じた」
有本被告は甲子園で韓国語の校歌が流れたニュースを見聞きし、また、ウトロ平和祈念館の建設を知っていたことから「展示予定の資料が保管された倉庫に放火し、資料を燃やせば社会から注目されると考えた」。大規模な犯行を企図し、ライター用のオイルを使用した発火装置を1週間かけて作り犯行に及んだ。
検察側は有本被告が犯行後、友人にSNSで送った「ど派手なテロファイヤーが起きてはります」などのメッセージも証拠として読み上げた。
一方、思い出の家や家財を失うなどした被害住民の厳罰を求める供述調書要旨、「不法占拠ではない」とする地権者の証言も読み上げられた。