大阪府の「まん延防止等重点措置」は他府県と足並みを揃え3月21日に全面解除された。しかし新型コロナによる大阪の死者数は21日現在4490人(東京は4069人)と突出。第6波に入った昨年12月17日から3月21日までに1426人を数え、いまも増え続けている。その9割以上が70歳以上。大阪市内で19日、コロナと介護を考える学習会(高齢社会をよくする女性の会・大阪主催)が開かれ、介護従事者らが厳しい現場の実情を紹介した。 (新聞うずみ火 栗原佳子)
第6波の大阪は医療がひっ迫、高齢者施設では感染者が出ても入院できず、施設内で隔離するなどの対処が常態化した。職員はガウン、マスクにゴーグル、フェイスシールド、手袋で完全に防護。それでも感染は収まらない。府の調査では第6波で発生したクラスターのうち5割弱が高齢者施設だ。
大阪市生野区で訪問介護事業所などを運営する「菜の花」社長の岡﨑和佳子さんは「おむつ交換、食事・入浴介助、換気できない部屋で援助をすることも。ヘルパーは常に高い感染リスクで働いています。いつどこで誰が感染してもおかしくありません」。介護職員の家族感染も多発、人手不足が常態化しているという。
介護職員から利用者への感染は絶対避けねばならない。そのためにも「検査を望むヘルパーやデイサービス職員にも定期的なPCR検査を受けられる体制が必要」と訴える。
「コロナ、コロナで日が暮れる」緊張の日々。岡﨑さんが紹介したのは重度障害者Aさんのケースだ。60代のAさんは「森永ヒ素ミルク事件」の被害者。脳性まひと診断され、24時間介護を受け自宅で一人暮らしをしている。
そのAさんがこの第6波でコロナに感染した。主治医は入院が必要と診断したが、酸素飽和度が正常値の最低ラインの96%。パンク状態の保健所は「重篤な症状ではないので入院できません」。Aさんは自宅療養を余儀なくされた。
しかし、感染リスクがあるため介護体制は整わず、Aさんは1日約13時間を1人で過ごさねばならなかった。おむつは濡れたまま。水も飲めない。「介護が必要な人に介護者が不在となる。生きていけないことを意味する。『重篤な症状』はバイタルサインや酸素濃度だけでは測れない。重篤な生活実態が重篤な症状を招くリスクがある」と岡﨑さん。
市議に相談、Aさんは1週間後に入院できた。だが3日後、退院基準となる発症10日を迎え、再びAさんは自宅へ。岡﨑さんは連日、深夜まで関係機関との調整に忙殺された。
訪問介護に取り組むNPO法人エフ・エー理事の長福洋子さんも人手不足に直面している。ヘルパーも高齢化。休職、退職者も増加した。基礎疾患がある配偶者が、退職を促すケースもあるという。
参考記事:「第6波 大阪コロナ死最多」繰り返す医療危機(1)保健所からの連絡は感染判明から1週間後
地域の高齢者の居場所として市内の商店街に「ふれあいサロン」も開設。年間2000人が利用していたが、コロナで2年間休止を余儀なくされている。ショックだったのは通っていた高齢者が「孤独死」したこと。「もしここが開いていれば」と悔やんだ。「4月から平日午後2時間だけ開けることにしました。少しでも世の中とつながりたいという気持ちに応えていかねば」と長福さんは話した。