1市6町がある奄美大島(鹿児島県)でも3月26日、駐屯地が開設された。奄美市名瀬大熊の奄美駐屯地と、瀬戸内町節子の瀬戸内分屯地だ。
奄美駐屯地は山の中腹にあるゴルフ場の一部を国が買い上げ16年9月着工。警備部隊と地対空ミサイル部隊350人が配備された。開設3日後に高台から駐屯地を見渡すと、軍用車両がずらりと並び、車載レーダーが回っていた。
監視行動を続ける上島啓さんは「宮古で撤去したという中距離多目的弾道弾も、こちらではそのまま配備されています。実際に隊員が訓練をしていますよ」とあきれ顔だ。
瀬戸内分屯地は8割強を山が占める奄美大島の中でも最も山深い地域にある。トンネル開通で交通量が減った旧道沿いの町有地28ヘクタールを2地区に分け、片方に隊舎やグラウンドなど、もう一方に弾薬庫を整備する計画。配備数は警備部隊と地対艦ミサイル部隊計200人とされる。フェンス越しに、地対空ミサイルらしき車両もよく見える。
この分屯地も未完成。山の掘削などが続く。現地を取材した軍事ジャーナリストの小西誠さんは「分屯地は実際は48ヘクタールあり、そのうち31ヘクタールが武器や弾薬を保管する火薬庫だと開設時に発表されました。地下構造物の弾薬庫です。おそらく宮古島、さらに今後作られるとされる石垣島などに投入される全部隊の武器弾薬庫になるでしょう。奄美駐屯地も当初30ヘクタールとしてきた敷地面積が開設に伴い50ヘクタールと大幅に修正されました」と懸念する。
3月31日、奄美市では駐屯地の記念式典にあわせブルーインパルスが曲芸飛行で盛り上げた。前日には瀬戸内町でパレードがあった。音楽隊の先導で分屯地の隊員が制服で行進、隊友会などの「歓迎」ののぼりが乱立し、日の丸の小旗を振る風景が見られた。
奄美大島では14年、両自治体に配備要請があった。説明会はいずれも地元で1回のみ。工事差し止めの裁判をしてきた「戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット」(城村典文代表)など反対の市民運動も地道に続くが、官民こぞっての歓迎ムードで声を上げにくいという。上島さんは「『イベント』は終わり。ここに住む者としては、長い基地との共存の始まりです」