統一地方選前半戦で注目を集めた大阪府知事・市長のダブル選は4月7日投開票され、知事選は前市長の吉村洋文氏が、市長選は前知事の松井一郎氏が初当選した。維新は同時に行われた府議選でも過半数を獲得、市議選は過半数に2議席足りなかったものの第一党を維持したことで、大阪市を廃止して特別区を設置する「都構想」の賛否を問う住民投票が年内にも再び実施される可能性が出てきた。このまま押し切られるのか。関西学院大教授の冨田宏治さんは「維新が圧倒的に強いと見るのは幻想だ」と指摘する。(矢野宏)
知事選(投票率49.49%)で、吉村氏の得票数は226万6103票で、小西禎一氏の125万4200票に100万票差をつけた。
市長選(投票率52.18%)では松井氏が66万819票を獲得し、47万6351票の柳本顕氏を破った。
冨田さんは得票率について、「知事選では前回の64.1%から64.4%で、市長選でも前回の54.4%から58.1%と微増。維新が大幅な支持を獲得したわけではない」と分析する。
今回、維新の勝因の一つ、「自民支持層の約5割、公明支持層の約2割が維新に流れたこと」について、こう説明する。
「維新は万全の組織戦を戦い、その集票組織の強固さを改めて示したが、大阪の自公、特に自民は組織的にボロボロ。国政選挙では辛うじて固められる支持層も地方での維新との一騎討ちではほとんど崩壊状態になってしまう。2016年7月の参院選大阪選挙区で、維新が獲得した票数は140万、自民票は75万、公明票が68万ですから、本来ならば140万対143万で、いい勝負になったはずだが、自民支持層の約40万票と公明支持層の約15万票が維新に流れれば200万票近くになる。今回はそこに立憲民主や共産支持層から『自民に入れるぐらいなら』と票が流れた。前回の知事選で松井氏が獲得したのは202万票、今回の吉村氏は226万票。実はそれほど驚くような数字ではありません」