宝田明さんの訃報に接し、愕然とした。呆然自失…語るべき言葉も見つからなかった。「ゴジラ」を題材に憲法の講義をする大学教員として取り上げられたのがご縁で、2019年夏に実現した宝田さんの講演会。タイトルは「ゴジラ和歌山上陸・宝田明さんと考える『平和』~これまでとこれからと」だった。(新聞うずみ火 高橋宏)
訃報は突然に舞い込んできた。
映画「ゴジラ」シリーズをはじめ多くの東宝映画に出演し、日本のミュージカルの草分けとして知られる俳優の宝田明さんが3月14日、87歳でこの世を去ったのだ。
最後に宝田さんが姿を見せたのは、映画『世の中にたえて桜のなかりせば』の完成披露があった3月10日だった。主演した宝田さんは、自らエグゼクティブプロデューサーも務めていた。
舞台挨拶を伝えるネット記事の写真で、宝田さんが車椅子で登場していたため、心配になって秘書の方に問い合わせたところ、「足腰の筋力が落ちてしまいましたが、体調は安定しております。今後また舞台挨拶やイベントにも参加します」とのお返事をいただき安堵したのが翌日。その1週間後にネットニュースで死去が報じられたのだが、にわかには信じられなかった。
1954年に公開された第1作『ゴジラ』で宝田さんは主人公の尾形秀人を演じた。この映画に強烈な影響を受けた私にとって、宝田さんはまさに「レジェンド」の一人であった。
宝田さん自身にとっても、出世作となった第1作『ゴジラ』に対する思い入れは深かったらしく、著書の『銀幕に愛を込めて』のサブタイトルを「ぼくはゴジラの同期生」としている。
文字通り、「雲の上の存在」だった宝田さんと、直接コンタクトを取る機会が、意外な形で訪れた。
2018年5月、憲法記念日に関連した全国紙の記事で、私はゴジラを題材に憲法の講義をする大学教員として取り上げられたのだが、それをご覧になった宝田さんからお手紙とお電話をいただいたのである。
参考記事:俳優・宝田明さんが語った旧満州(上)「夢は関東軍兵士、軍国少年だった」
お手紙には「私も学校その他平和団体、憲法を守る会等で講演を依頼され、月2回位各地へ伺っております」とつづられていた。
このことがご縁で19年8月、宝田さんを和歌山に招いて「ゴジラ和歌山上陸・宝田明さんと考える『平和』~これまでとこれからと」という講演会を開催できた。(和歌山信愛女子短期大学副学長・和歌山県平和委員会代表理事)