自宅が全焼! どん底から這い上がった家族のドキュメンタリー映画「焼け跡クロニクル」

我が家が全焼した映画監督の原將人さん(71)一家が再び立ち上がるまでの日々を自ら記録したドキュメンタリー映画「焼け跡クロニクル」。わずかに生き残った8ミリフィルムとスマートフォンやタブレット端末で撮影したデジタル映像を組み合わせ、喪失を再生へと変えた家族の年代記(クロニクル)だ。(新聞うずみ火 栗原佳子)

映画のワンシーン©2022『焼け跡クロニクル』プロジェクト

 

「20世紀ノスタルジア」などの作品で知られる原さん。2018年7月、京都・西陣の路地裏にあった自宅から出火した。漏電の可能性が高いという。

最初に気づいたのは原さんだった。「1階で仕事をしていると、上でミシミシと音がしました。古い家なのでイタチが出るのです。2階にあがると、炎の子供たちが輪になってダンスをしていました」

とっさに布団をかぶせたが、火の勢いは止まらなかった。

映画のワンシーン©2022『焼け跡クロニクル』プロジェクト

大学生の長男、5歳の双子の女児を避難させ、編集中の作品の救出に取って返した。パソコンとハードディスクを持ち出したが、顔や首、腕に大やけどを負い救急搬送された。

1年後、原さんは「焼け跡ダイアリー」と題した作品をまとめた。だが、深い喪失感に苛まれた原さんの精神状態を映すかのように、重い色調だった。そんな原さんに、妻のまおりさん(49)は「もう1本作ってほしい」と提案した。

出火直後、仕事先から駆けつけたまおりさんは、火災や直後の避難生活をスマホで撮影していた。辛くて向き合えなかったが、思い切って再生すると、懸命に前に進もうとする子供たちも映っていた。

参考記事:入管行政の実態を告発したドキュメンタリー映画「牛久」

映画のワンシーン©2022『焼け跡クロニクル』プロジェクト

「この映像で私も救われました。辛かった記憶を家族で共有し再生する映画を作りたいと思いました」とまおりさん。同じように被災した人にも届けたいという。「再生できることを知ってほしい」と。

関西ではシネリーブル梅田、京都みなみ会館、アップリンク京都で上映中。

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