◆「現場は非常事態」
第4波で大阪は医療崩壊した。第6波では高齢者施設での感染者が入院できず、そのまま亡くなるケースが続出。第4波の再来との声も医療現場から聞こえる。
「医療崩壊した第4波に匹敵しているのは間違いありません。多忙さという意味では第4波よりハードというのが我々の実感です」
西淀病院(大阪市西淀川区)副院長の大島民旗医師はそう指摘する。
同院は一般病床や回復期リハビリテーション病棟など約200床を備える民間の2次救急病院。いま搬送されてくるのは呼吸不全が進行した重症者が多い。同院が受け入れ可能な重症患者は1人だが、1月末からは2、3人を受け入れている状態だという。
救急も入院も「断らない」方針を掲げてきた同院だが、それも危機に直面する。院内で感染者が出たことで制限せざるを得ない時期もあった。「医療人として辛い」と大島副院長。第6波のオミクロン株は感染力が強く、例えば病棟で、4人部屋の1人の感染がわかると残りの3人が感染するというケースも。一定の換気をしても難しいという。
職員の感染者も続出。同病院では第5波までの感染者は合わせて一桁だった。それがこの6波だけで20人近くが感染。綱渡りで業務を維持する状況だという。また、発熱外来は2、3日後まで予約がびっしり。また医療機関が「検査なし」で陽性診断することになった「みなし陽性」も、現場の負荷を増す。
大島副院長は大阪民主医療機関連合会(大阪民医連)の会長も務める。民医連に加盟する西淀病院など府内4病院の院長と連名で吉村知事宛てに緊急に要請した。「医療・介護福祉現場はすでに緊急事態。救える命を失わないために、重症病床運用率40%超を待つことなく、より強い行動制限含め必要な感染抑制対策に全力を挙げてほしい」と。
40%は大阪府が国へ緊急事態宣言を要請する基準である。 「第4波は重症から病床が埋まりましたが、こんどは軽・中等症が先に埋まるのが特徴です。コロナが若干軽症化していますが、感染が増えれば重症者も増えます。うちの病院も重症病床1床をオーバーして運用しているし、40%超を待っていたら、さらに医療が立ちいかなくなります。現場はもう非常事態です」
同じ日、吉村知事は会見で「医療非常事態」を宣言。しかし、緊急事態宣言をめぐっては「重症病床の実質の使用率は現在25%。今後の状況を注視したい」と述べた。大島副院長は「医療非常事態宣言は私たちにすれば、ほぼ『医療お手上げ宣言』です」とあきれる。
まん延防止等重点措置の延長を要請した2月16日、第6波の死者数は391人に上り、第5波(昨年6月21日~12月16日)の358人を上回った。人口が1・5倍の東京の179人をはるかに超えている。
しかし吉村知事はその2日前の会見で「重点措置延長は当然」としつつ、緊急事態宣言の要請は見送るとした。「府内の感染状況がピークに達して、少し下がっている可能性がある」が理由だった。
これに対し、大島副院長は「新規感染者は若干減っていますが、いまの陽性率は30%~40%。感染者をとらえきれていないということ。もっと真の陽性者は増えているはず。減少しているという評価すらできておらず、しかも重症者は1週間ほど遅れて増えます。ピークアウトしている感触はありません」と反論する。