神戸市が外郭団体「神戸交通振興株式会社」を来春解散する。市交通局から16年にわたって魚崎営業所のバス事業を受託運営してきたが、入札で委託先が阪急バスに変わったためだ。営業所の運転手は公務員でなく、1年ごとの契約社員のため、退職金制度もない。9月の神戸市会で市交通局長は「再雇用に最大限努力する」と答弁したが、2カ月たっても再雇用は示されていない。(矢野宏)
神戸交通振興は、市交通局が100%出資し1984年に設立された株式会社で、社員数は約360人(7月時点)。主に路線バスの運行や地下鉄の駅業務、駅ビル管理などを受託してきた。市は昨年9月、「行財政改革方針2025」を策定し、現在31ある外郭団体の見直しを検討。神戸交通振興は来年3月末で運行受託業務が終了し、4月1日以降は阪急バスに委託変更されるため、解散となる。
魚崎営業所では運転手105人のほか、運行管理の係員11人が勤務している。全従業員の雇用確保を求めて四つの労働組合が「神戸交通振興で働く労働者の雇用を守る会」を結成、交渉しているが、会社側は「阪急バスにお願いしているが全員は無理」「再就職会社と契約したので、そこで援助を受けてください」の繰り返し。10月に入り、市交通局長あてに雇用先の確保などを求める要請書を出したが、「神戸交通振興と連携して雇用受け入れ先のさらなる確保に努めていきたいと思います」などと通り一遍の回答だった。
運転手の一人は、「委託先が変わったから会社を解散しますってあり得ないでしょう。私らは使い捨てなのでしょうね」と語り、肩を落とした。
労働者の雇用を守る会では11月29日に再度、会社側と交渉にのぞんだが、「会社側の誠意は見られなかった」という。