「放火した犯人もウトロに来ていれば…だから出会いの場にしたい」田川明子館長

「『ウトロ丸』に乗ったら泥沼だった。日本社会のシステムから上手に排除されていた」。出会えば分かり合える。だから、オープンしたウトロ平和祈念館は「出会いの場」にしたいと田川明子館長はほほ笑む。(新聞うずみ火 矢野宏)

ウトロ平和祈念館の開館記念式典の最終日に披露された農楽=5月5日、京都府宇治市ウトロ

オープンした平和祈念館は、ウトロ地区の歴史を語り継ぎ、平和について考えてもらおうと、住民や支援者で作る「ウトロ民間基金財団」が運営する。
3階建て、延べ床面積は約460平方メートル。1階には多目的ホールが設置され、住民と支援者による定例お茶会のほか、訪れた人との交流会やイベント、学習会などが開かれる。
2階は常設展示室。地区の歴史を伝えるパネルや当時の生活雑貨などが展示されている。立ち退きを求められた住民がデモや座り込みなどで抵抗する姿を収めた写真などが訪れた人たちの注目を集めていた。

ウトロ地区の歩みも展示された=5月5日、京都府宇治市

3階は企画展示室で、最初の企画は「ウトロの生きた人々」。この地で生き、亡くなった在日コリアン1世の写真や戦前の言葉が紹介されている。
〈ウトロを訪ねてくる若い人にいつも言うんだがともかく戦争をしてはいかん。平和でなければいかん。ワシらは骨身にしみてる。バカヤロウ、コノヤロウと言われながら仕事をしてた先輩は仲間らはもうみんな死んでしまったけど、ここウトロにはその子どもや孫が家を建てて、働いて、学校に行ったりしている。住み慣れた所を今さら退けと言われても、よそに行く訳にはいかん〉
祈念館前の広場にはウトロの原型ともいうべき飯場が移設されている。

ウトロ平和祈念館前の広場に移設された「飯場」=5月5日、京都府宇治市

田川館長は「ウトロを守る会」代表だった。道のりの厳しさを振り返りながら、「ウトロは戦争で生まれた街ですから発信するのは平和です」と語る。
放火犯について尋ねると、こう語った。「ネットの世界で妄想を膨らませていたのかな。実際にウトロの人たちと会っていたら、こんなことをしなかったかもしれない。まずは出会うことが大切なんです」
金、土、日、月曜日の午前10時~午後4時まで開館。1階は無料で、2、3階の入館料は中学生以上300円、小学生100円、未就学児無料。

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