「4特別区の基準財政需要額を算出した上で、現在の大阪市の基準財政需要額と比較し、『特別区になった方がいいのか、政令指定都市の大阪市のままの方がいいのか』を検討するのは当然のこと。特別区は政令市のような権限もなく財源も乏しい。大阪府から財源を融通してもらって運営するという基礎自治体なのだから、『特別区の財源がどうなるのか』は、はっきりさせておかなくてはならない」
しかし、法定協議会では一度たりとも具体的な基準財政需要額が議論の俎上に上ったことはなかったという。
「維新の委員らは、特別区が運営していけるかどうかの根本的な部分を議論の対象から外し、『特別区長は選挙で選ばれるのだからしっかり運営するはずだ』などと特別区長に責任を集約する主張をしてきた。なぜか、今より行政コストが膨らみ、二重行政の解消どころか、余計にお金がかかることが数字的にはっきりしてしまうから。だからわざと計算しなかったのではないか」
大阪市を四つの特別区に分割する場合、分割コストが働き、基準財政需要額は膨らむ。収入は大阪市の時と変わらない。しかも、差額は地方交付税で補てんされない。というのも、国の方針で進められた市町村合併と違い、大阪市を廃止して分割することは大阪府市独自の自治体再編なので、行政コストが増大しようが国の補助はないのだ。
「財源の乏しい特別区が自らの責任で何とかするしかなく、4人の特別区長は就任直後に『まず何を削るか』という気の毒な決断を迫られることになるだろう」という幸田さん。「そのしわ寄せは住民生活に向かう」という。
維新は「住民サービスは下がりません」と言い、反対派は「劣化する」と主張している。四つの特別区になったら、どれだけの分割コストがかかるのか。自民党市議団の試算では最低200億円ぐらいはアップするという。
東京は同じ特別区だが、仕組みが違う。大金持ちなので国から地方交付税をもらっていない。23の特別区は東京都から財政交付金をもらっている。東京都というのは日本の中に別の国があるようなもの。国の基準よりもいい待遇のお金をもらっている。だから、東京の特別区はこれまでやってくることができた。
幸田さんはこう指摘する。
「大阪市を廃止して設置される四つの特別区は日本一貧乏な自治体になるだろう」
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