5月13日、国の原子力規制委員会は、青森県六ヶ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場(以下、再処理工場)について、福島第一原発事故後に定められた新規制基準に適合していると判断した。人々の目が新型コロナウイルスの感染拡大防止に奪われている中で、国は検察官の定年延長を可能とする検察庁法改正を図るなど、私たちの将来に関わる問題を「火事場泥棒」のように決めていこうとしている。そのような中で、原子力を巡っても危険な政策が動き出した。
再処理工場は、原発から出た使用済み核燃料を再利用するという「核燃料サイクル政策」の中核を成す施設だ。「資源少国」とされる日本で、使用済み核燃料(つまり核のゴミ)を化学的に再処理して、燃え残りのウランやプルトニウム(原発の運転中に生成される自然界にはない元素)を取り出し、再び燃料とする。 同時に、ウランを燃料とする軽水炉と呼ばれる今の原発とは異なり、プルトニウムを燃料とする高速増殖炉を開発する。この高速増殖炉が、燃料としたプルトニウムより多いプルトニウムを生み出すことにより、将来的には核燃料の自給自足が可能となるというのが、元々の核燃料サイクル構想であった。
私が子どもの頃は、「高速増殖炉が実用化されれば、将来の電気料金はタダになる」と言われていた。核燃料サイクル政策は、まさにバラ色の原子力政策だったのである。しかし、高速増殖炉は技術的な問題が次々と明らかになり、世界の国々は撤退を続けてきた。日本は最後までこだわってきたのだが、2016年に福井県敦賀市に建設していた原型炉「もんじゅ」の廃炉を決定している。つまり、核燃料サイクル政策は事実上、破綻してしまったのだ。
高速増殖炉の技術だけではなく、再処理技術も問題は山積していた。国内初の再処理施設(「工場」ではない実験施設レベル)は茨城県東海村で1977年に稼働し、2007年まで運転されたが、再処理技術の確立にはいたらなかった。六ヶ所村の再処理工場は1993年に着工され、97年に完成・操業するはずであった。しかし、工事の遅れや設計の見直しなどでずるずると延期が続く。
2001年からようやく様々な試験が始まるが、トラブル続きで09年には配管から高レベル廃液が漏れ出す事故まで起きた。その度に、事業者である日本原燃は完成時期を延期してきたが、その数は24回、現在の目標は21年前半となっている。建設費も、当初見込みは7600億円であったが、安全対策費などが膨らんだ結果、少なくとも約2兆9000億円になると見られている。運転コストや将来の廃止措置まで含めた事業費の見積もりは、約13兆9000円と莫大なものになっているのだ。
再処理工場は、普通の原発1年分の放射能を1日で出してしまうなど、極めて危険な施設である。それだけでも大問題であるが、この施設で大量のプルトニウムが生産される点が重要だ。プルトニウムは軍事転用が容易な核物質であるため、それが備蓄されることは国際社会にとって大きな懸念となる。これまで日本は、国内に備蓄されたプルトニウム全てを発電に利用する計画を示し、再処理工場の建設に理解を求めてきた。
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