消防士がやっと3階に入れたのは午後2時頃だ。1階にいた人や、けが覚悟で2階から飛び降りた人は助かったが、3階から屋上へつながる階段付近は、19人が折り重なるように倒れていた。
消防の調べでは屋上に出る扉の鍵はかかっておらず、重いやけどや呼吸困難で力尽きたのか。大半は一酸化中毒だったという。火災発生時、ビルにいた従業員や取引関係者など74人の大半は猛火に驚き、不幸にも上へ、上へと逃げてしまった。
22日に開かれた京都市議会での山内博貴・市消防局長の説明では、ビルは消防法上の違反はなく防火訓練も適宜に行われていた。消防局から表彰もされていたという。らせん階段も上階への延焼を防ぐ「垂れ壁」があったという。そんな物が役に立たない火勢だったのだろう。このビルは食堂もなく火を使わないので、規制は厳しくなかった。
「朝の10時35分頃、踊りの稽古のテープを回したら、ドーンという音がした。子供がボールでも壁にぶつけたんかと思ったら、すごい臭いがしてきた。外へ出ると京アニさんから激しく煙が上がっていた。消防団にガレージを貸すと担架で若い女性が運ばれてきた。服は焼けただれていた。息はあったけど放心状態でした」と振り返るのは、六地蔵駅前で日本舞踊を教える女性。一緒にいた女性は「スタジオ前の道をいつも通るので弁当を買いに出る社員さんによく会います。みんないい子たち。こんなことになるなんて」と目を伏せた。大きな爆発音は2回。後はボン、ボンと散発的に音が聞こえたという。
大やけどをしながら、青葉容疑者は現場から南の同駅方向へ逃げていた。近くでエステサロンを営む女性が語ってくれた。「朝10時35分頃にインターホンが鳴った。人影が映ってなかったけど飼い犬が鳴くので出たら左側に男性が仰向けで倒れていた。腕は皮がめくれ上がり、すねから下がむき出しでジーンズから煙や火が出ていた。近所の人に冷やしたらな、と言われてホースで水をかけ、声をかけたけど返事はなかった。やってきた警官とのやり取りを聞いて、被害者じゃなくて放火犯と知り仰天しました」