7月21日投開票された参院選で、与党の自民、公明両党は改選議席の過半数(63議席)を超え、71議席を獲得した。憲法改正に前向きな日本維新の会を加えた改憲勢力は、国会発議に必要な3分の2の議席(164議席)に4議席及ばなかったものの、安倍首相は「私の使命として、残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたい」と明言、今秋の臨時国会で改憲論議を進めるべきだとの考えを示した。国会発議まで一気に進むのか、年内解散はあるのかなど、時事通信社解説委員の山田恵資(けいすけ)さんに聞いた。(矢野宏)
今回の投票率が24年ぶりに50%を割り込む48・8%と、過去2番目に低い数字となった。なぜ、関心が低かったのか。山田さんは「国民の政治への関心は高いとは思うが、年金問題や消費税増税、景気・雇用など国民の暮らしに密着するテーマが選挙の争点にならなかったことで、有権者の熱量が上がらなかった」と振り返る。
しかも、安倍政権に審判を下そうにも代わりの受け皿がなかったことも影響したという。「2年前の衆院選では、立憲民主党が反安倍票をすくい取る受け皿になったが、今回は核になる受け皿政党がなかった。立憲は議席を伸ばしたものの17議席にとどまり、国民民主党との両党の合計議席でも旧民進党が前回獲得した32議席を下回っています」
勝敗のカギを握る1人区では、野党はもっと早く一本化し大同団結して闘うべきだったし、複数区も野党内での調整もすみ分けもなく候補者を擁立したため、与党が漁夫の利を得る結果になった。象徴的だったのが大阪選挙区で、共産現職と立憲新人が票を食い合い、4議席はすべて改憲勢力が占めた。
安倍首相は「私たちは勝った」と宣言したが、与党は勝ったと言えるのか。
「自民党の二階幹事長が設定した『与党で改選過半数』という勝敗ラインを超えることは想定済みだった。『参院選で勝った』と言いたかったので、あえて低く設定したのでしょう。だが、自民は議席数を九つ減らして単独過半数を獲得できなかった。国民からの審判でいえば可もなく不可もなし。負けたとまでは言えないが勝ったとも言えない。野党にしても過半数も程遠いわけだから勝ったとは言えない。全体として勝利感に浸っている余裕は与野党ともないのではないか」