カジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、国は4月27日に大阪府と長崎県の区域整備計画を受理した。焦点は国の審査に移ったが、大阪府が申請した区域整備計画の中身はあまりにも杜撰だ。(新聞うずみ火 矢野宏、栗原佳子)
区域整備計画は2019年の基本構想と比べて、IR施設の総床面積が100万平方メートルから77万平方メートルに削減され、展示場も10万平方メートルから2万平方メートルに縮小された。「夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会」事務局長の武田かおりさんは「世界最高水準どころか築40年近いインテックス大阪(7万平方メートル)と比べても3分の1以下」とあきれる。
一方で、年間の経済波及効果は約7600億円から約1兆1400億円に好転。年間収入見込み額は約700億円から約1060億円(府・市で折半)、年間来場者数も約1500万人から約2000万人に増えた。コロナ前のUSJの年間来場者数(約1450万人)の1・4倍だ。
楽観の根拠を武田さんが市に尋ねると「事業者がそう言っている」というあいまいな答えだった。
「事業者は基本協定でいつでも撤退可能なのに、府と市には訴訟・賠償リスクが発生する不平等な内容。MGMは実際、ベトナムで開業直前に撤退したことがありました」
IR誘致を表明していた和歌山県で4月20日、県議会が区域整備計画を反対多数で否決。和歌山へのIR誘致は頓挫したことで、候補地は大阪と長崎の2カ所に絞られた。
参考記事:「大阪市は史上最大の財政リスクを抱える」大阪IR国に認定申請(上)
大阪では17年にIR推進局、20年に大阪港湾局、21年には大阪都市計画局、万博推進局と府と市の共同組織が設置され、広域一元化条例も成立した。森さんはこう指摘する。
「IRの主体は府と大阪IR株式会社で、市は土地を提供し、金を出すだけの存在に成り下がる。現在、市の財政局長、財政部長、経済戦略局長など財政、経済部局のトップは府職員が占め、公共事業や財政、経済政策などは事実上、府の支配下にあります。維新にとってIRは、市民に2度否定された『大阪都構想』の総仕上げなのです」(終)