大阪市立高校が府に移管 無償譲渡差し止め訴訟で原告敗訴(上)

大阪地裁

そんな中、昨年6月、市立高校の卒業生ら5人が「大阪市になんの見返りもない『市民の財産投げ捨て』で市民の財産を棄損している」として「大阪市民の財産を守る会」を結成。市に住民監査を請求したが棄却され、昨年10月、大阪地裁に提訴した。地方財政法、地方自治法、大阪市財産条例に違反するなどとして無償譲渡契約締結の差し止めを求めていた。
争点の一つが、巨額な財産を議決もなしに無償譲渡する違法性だった。市議会が議決したのは「市立の高校廃止」で、無償譲渡の議案は上程もされなかったからだ。地方自治法は普通地方公共団体の寄付には「条例適用か議会の議決が必要」としており、市は議決を回避する代わりに市財産条例16条「普通財産は公用または公共用に供するために特に無償とする必要がある場合に限り、国または公法人にこれを譲与することができる」を適用した。「特に無償とする必要がある場合」を判断するのは市長の権限。原告側は「市長の裁量権を逸脱している」として、同条例の適用は誤りだと主張していた。

判決は無償譲渡について「市財産条例16条は適用されない。議決が必要」と判断。しかし、一方で、昨年12月の市議会で「無償譲渡を前提で議論され、審議の実態に即して無償譲渡を認める趣旨の議決がされた」と結論付けた。
また、移管は「長期的な少子化を踏まえ、府または市の高等学校教育及び義務教育を効果的かつ充実したものにする目的で、一定の公共性、公益性が認められる」とし、無償譲渡は「不合理ではない」とした。

森鍵裁判長は4月に契約が迫っていることから3月末までに判決を出すと明言、論点を整理して迅速に審理を進めていた。それだけに、門前払いともいえる判断に、原告や弁護団、支援者らの落胆の色は濃かった。

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