◆公費負担は増大の一途 一方で
「税金は一切使わない」としながら、公費負担は増大の一途。その一例が「790億円の追加負担」だ。IR用地に土壌汚染や液状化の危険性が指摘され、市が公金を投じることになった。 松井市長は「IRの来場者が安心して過ごせる土壌に改良するのは土地所有者である大阪市の責任」などと説明、一般会計ではなく、特別会計の「港湾事業会計」から借金し、返済には用地の売却・貸付で得た収入をあてるので税金は使わないとしている。 しかし計画案公表前に実施された市の大規模事業リスク管理会議では790億円どころか1578億円の土地関連費用が計上されていた。万博跡地を整備するためにさらに788億円を要するという見積りだという。 ほかにも市内からのアクセス道路「淀川左岸線」2期工事が土壌汚染対策で750億円増加。夢洲の用途変更を機に結成された市民団体「夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会(夢洲懇談会)」は、現時点で2482億円のコスト増と試算している。 特に今後も土壌対策費は工事が進めば進むほどその額が膨らむ恐れがある。夢洲は06年に国の指針が定められるまでの約20年、規制が働かないまま有害物質を含む建設残土や浚渫土砂が埋め立てられてきたからだ。また万博会場建設費も600億円が増加、当初の1.5倍に膨らんでいる。 「夢洲懇談会」の一人で、名古屋市立大学名誉教授(地方財政学)の山田明さん(73)は次のように指摘する。 「国家イベントを誘致する段階では誘致を有利に進めるため過大な需要予測が行われ、関連費用を過少に見積もります。会場建設費などの直接的経費より、道路や地下鉄など関連事業の負担が重くなることが多い。『お祭り型公共投資』に伴う地元負担膨張の構図です。大規模な国家イベントに依存した財政は地元自治体の債務を膨張させることになります」 また市が土地関連に異例の財政負担を決めたことについて「市は唯一手を挙げたMGM・オリックスをつなぎとめるために言いなりなのではないか。IR土地関連費用負担の経緯を明らかにすべきです」と話す。
◆松井市長はなんで来ないんや? 住民説明会は「打ち切り」
府と市は1月23日から29日まで4回、区画整備計画案の公聴会を市内で開いた。公述した40人のうち大部分が反対意見だった。ギャンブル依存症を懸念する意見も多く、実際に依存症の親族がいるという公述人は、身内が借金を肩代わりさせられた体験を語り「ギャンブルは人の心も家族も仕事も奪ってしまう恐ろしいもの。計画案を再考してほしい」と涙ぐみながら訴えていた。 しかし公聴会は意見を述べるだけの場。同時並行的に1月7日から府内11カ所ではじまった住民説明会では、質疑も設けられたが、行政側は住民側が問いただすリスクには口をつぐみ紛糾、時間切れというパターンがほとんどだった。 しかも2月1日に、新型コロナを理由に突然、残る4回分が中止になった。松井市長、吉村知事は公聴会にも説明会にも姿を見せなかった。どの会場でも「なんで市長も知事も来ないんや」と怒声が飛んでいた。 住民への最低限の説明の場も打ち切ったまま、府と市は2月定例会に突入する。府議会は維新が単独過半数。市議会は維新が最大会派だが過半数には届いていない。 2月10日、自民市議団はカジノ(IR誘致)の是非を問う住民投票条例案を提出したが、維新と維新に協力姿勢を見せる公明により否決された。(了)
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