フクシマ後の原子力 科学者は本来の役割を

忖度に揺らぐ信頼

私が非常勤講師をしている大学で、新型コロナウイルスの感染者が出た。保健所の説明では、PCR検査は濃厚接触者のみで良いとのことだったが、大学の判断で関係者全員が検査を受けることになった。週に1回、100分の講義だけしていた私も、PCR検査を受けた(結果は陰性)。その結果、新たに3名が陽性となったが、他は陰性だったのである。ところが、大学名が公表されたことで、その姉妹校の教職員も「疑いの目」で見られてしまう。

PCR検査を受けただけで、あたかも濃厚接触者であるかのように警戒されてしまったのだ。新型コロナウイルスについて専門家の意見や提言が飛び交う中、信頼できる科学的根拠がわからなくなっていることが原因の一つだと思われる。

私たちにとって、「公式」の根拠は、国の専門家会議が示すデータや見解、提言だったはずだ。ここで改めて振り返ってみたい。専門家会議のメンバーは、常に自らの専門性からのみ発言をしていただろうか? 特に医学や感染症を専門とする科学者が、政治や経済などに影響されず、自らの見解を明らかにしてきたかを検証する必要があろう。

科学者は、科学的知見に基づいた提言のみするべきである。そこに政治的な忖度があってはならない。科学者の提言を受けて、政策を決定するのは政治家の仕事で、それに対する責任は政治家が負うからだ。一斉休校が問題視されるのは、科学的根拠に基づいていないからであろう。

今、問題となっている「GO TO トラベル」のような愚策に、間違っても科学者は「科学的」根拠を与えるべきではない。この危機的状況で、科学者には本来の役割をきちんと果たしてもらわなければならないのだ。

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