京アニ放火殺人事件 容疑者の足跡を追う

95年春、県立浦和高校の定時制に入学。通いながら、埼玉県庁で「メールボーイ」と呼ばれ、文書課で庁内の書類を関係先に届けるアルバイトを続けた。当時の女性上司(退職)は取材拒否だったが、「てきぱきと仕事し、明るかった」と話しているという。まじめで学校の成績もよかった。しかし業務が民間委託されて契約更新されなかった。98年に高校を卒業したが、当時は就職氷河期。ガソリンスタンド、コンビニなど点々とした。

青葉容疑者について当時から知るアパート横の住民の男性は「体格はよかった。悪い子ではなかったが、周囲とコミュニケーションはとらなかった。妹はよく大家さんと喧嘩していたな。たぶん家賃のことでしょう」と振り返る。21歳の時、悲劇が起きる。父の自殺だ。近所の商店の女性は「ある時、杖をついていて『事故を起こしてしまった』と話していた。事故で会社を解雇され、生活が困窮したらしい。ある日、救急車や警察が来て騒ぎになった。子どもたちは血だらけになった部屋を目撃していたようです。どんな思いだったのか」と振り返る。

アパートは4世帯ほどだが人が住んでいる気配はなかった。「妹は少し離れたボロボロのアパートに越した。家賃が安かったのでしょう」と話した後、「妹も自殺したって聞いたけど」と声を潜めたが、情報源は取材に来た記者だった。大黒柱の自殺で一家は離散状態となり、青葉容疑者は人との接触を拒否してゆく。

99年から春日部市のアパートで一人暮らしを始めたが2006年には越谷市で女性の下着を盗み、逮捕された。「金欠でむしゃくしゃしてやった」などと警察に話した。懲役2年で執行猶予だった。08年暮れから職業安定所の推薦で茨城県常総市の雇用促進住宅に入った。行ってみたが、外国人労働者が多く彼を覚えている人はいなかった。管理人さんは「約3万円の家賃は滞納だった。延滞金と合わせて231万円ほど未納。『払ってくださいよ』と言っても無言か生返事でした。毎日、夜中の0時4分に決まって目覚ましが鳴り響くのです。苦情があり『周囲が迷惑しています』と紙に書いてドアに挟んだりしていました」と話す。

 12年6月、事件を起こす。茨城県坂東市のコンビニ「ココストア岩井弓田店」に刃物を持って押し入り、約2万円を奪った。当時の話を聞こうと思ったがいくら探してもない。美容室になっていた。管理人さんは「コンビニ強盗で警察を部屋に案内しました。冷蔵庫の扉は空いたままでみんな腐っていた。パソコンの画面は粉々。壁にはハンマーで開けたらしい大きな穴が壁に二つあった」と振り返った。

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