初めて車を買った時、『けいおん』の舞台になった滋賀県豊郷町の小学校へ走ったという。「なんの変哲もない田舎の風景なのですが、あの映像と重ねてみていると、なんとも言えない気持ちになっていました。実際にある場所と結びつくのがよかった」と話した。
しかし容疑者についてきくと、「犯人のことなんか考えたくもない。名前も聞きたくない」といった。「好きだった監督さんも亡くなったみたいです」と再び泣き出した稲垣さんは駅へ戻っていった。.
夫、高校生、中学生、6歳児と3人の子供の家族5人で献花と訪れた看護師の女性(37)。「3月まで、すぐ近くに住んでいました。クリスマスのイルミネーションもきれいでした。町内会のイベントの打ち合わせとかでよく京アニさんへ行きました。作品の原画が飾られていて子供たちも見ることができました。よくしてくださった責任者の男性が亡くなったのでは」と心配顔だ。
まだ犠牲者名が公表されず、報道陣も遺族や友人の取材がほとんどできていない。記者が盛んに名を聞こうとするが「それは」と拒否して去っていった。
支援を呼びかける米国のクラウドファンディングではあっという間に1億数千万円に達したという。
イギリスのニューカッスルではアニメイベントが開かれ、募金が行われた。現場にいたロイター通信の東京支社の記者ティム・ケリーさんは発生日から取材している。
「あんなやり方の放火は防ぐのが難しいでしょう。あの犯人の精神形成面を解明してそういう風にならないようにしていくことが大事と思います」と堪能な日本語で話した。
献花台も英語や中国語などの感謝や、スタッフへの励ましが書かれていた。現場は海外メディアの取材班も驚くほど多かった。
4月のパリ、ノートルダム寺院の火災も世界的な財産の損失だが人命が奪われてはいない。京都では世界に誇る日本文化の担い手たちの命が一人の男の「狂気」によって一瞬に奪われてしまった。多くは若者で6割以上が女性だ。
死者34人、重軽傷34人(7月22日現在 容疑者含まず)。これは放火殺人としては平成以降で最悪だ。2008年の大阪のビデオ店放火事件の16人の倍以上の犠牲者数だ。放火に限らない殺人事件としても1938年に岡山県で起きた猟銃による「津山30人殺し」を上回る史上最悪の犠牲者数である。
午前10時半頃、「爆発音とともに建物全体から煙が出ている」の通報で消防が駆け付けたが、あまりの猛煙と火勢で救助ができない。第一工場からは一時、噴火のような黒煙が昇っていた。