大阪維新が広域行政一元化 「都構想」ゾンビ条例画策

いわゆる「大阪都構想」は11月1日の住民投票で否決され、政令指定都市・大阪市は存続した。しかし、新型コロナ感染が深刻さを増す中でも、二度もノーを突き付けられた「都構想」への執着の動きは止まらない。(栗原佳子)

 

大阪市議会は12月9日、大阪市立の高校21校を府へ移管させる条例案を大阪維新の会と公明の賛成多数で可決した。維新が「府市一元化」「二重行政解消」などとして、「都構想」=大阪市廃止・分割を前提に推進してきた。

市議会(定数83)の第1党は維新で40議席を有するが過半数には届かない。「財産売却の場合は府市が協議する」などの付帯決議を付して公明が賛成に回った。

関連の条例案は21日、維新が単独過半数を占める府議会(定数88)でも可決した。維新、公明に加え、こちらは自民も賛成した。大阪市廃止・分割を巡っても自民市議団と府議団は賛否が分かれた。

両議会の議決により、市立高21校は2022年度から府立に移管されることになった。公立高を設置する自治体は全国にあるが、21校は最多。政令市から都道府県への移管は初めてだという。

大阪の高等教育は、府立は普通教育、市立は商業や工業などの実業教育が中心という役割分担がなされてきた歴史がある。そんな中で11年、移管を打ち出したのが大阪市長で大阪維新の会代表だった橋下徹氏。市議会の反発もあり、いったんは立ち消えたが、昨年4月、府知事・市長ダブルクロス選で維新が大勝すると息を吹き返す。2度目の住民投票実施が現実味を増す中、同年9月、府教委と市教委が移管で合意した。大阪には堺市、東大阪市、岸和田市にも市立高が設置されているが「二重行政」として俎上に上げられたのは大阪市のそれだけだ。

市議会では採決に先立つ討論で、賛成、反対の立場から維新、自民、共産が意見を述べた。自民の太田晶也市議は「大阪市の特色ある教育内容やサービスが失われる」と懸念を示し、具体例を挙げた。「市立高は商業、工業など専門学科を中心に、卒業後は社会の即戦力となるよう人材育成に取り組んできた特色がある。商業系は府立にないばかりか、淀商業の福祉学科についても府には何のノウハウもない。工芸高のような美術やデザインに特化した高校、泉尾工業のようにファッションやセラミックが学べる学校もあるが、条例案は、各校で育まれてきた特色を乱暴に無視している」
移管に伴い、校舎や土地も府に無償譲渡される。合わせて1500億円とされる市民の財産がまるごと府のものになる。しかも、府立高になると3年連続定員割れした高校は再編対象。橋下市長、松井一郎知事時代の12年に成立した府立学校条例に定められた「3年ルール」が適用される。

少子化を反映して、定員割れは市立高でも珍しくない。実は既に移管を前提に統廃合の検討が始まっているケースもある。東淀川、生野、泉尾の工業高3校だ。廃校後の跡地利用は府の自由。売却益は府の財政に入る。太田市議は「条例案は単なる政治目的。大阪市の財産を奪うだけ」と批判、「地方財政法などに違反する疑いがある」とも指摘した。

高校移管には先行例がある。16年に「二重行政」だとして市立の12校が府に移管された特別支援学校だ。

府立障害児学校教職員組合によると「大阪市立の障害児学校は全国でも先進的な役割を果たしてきた」という。移管により市の独自事業が切り捨てられ、教育条件が低下すると保護者や教職員は反対した。しかし府市は「教育条件は後退させない」の一点張りだった。

ところが府に移管されたいま予算は大幅に削減。肢体不自由の子どもたちの学校に大阪市が独自予算で配置していた「実習教員」は府の基準に合わせて37人リストラされたという。

大阪維新の会が10年の結党以来掲げてきた看板政策「大阪都構想」。橋下氏が「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」と広言したように、市を廃止して特別区に分割、政令市が持つ権限と財源を府に移すことが柱だ。見据えるのはIRカジノや万博などの大型開発。15年は5特別区、今回は4特別区に市を分割する制度案=特別区設置協定書の賛否が住民投票で問われ、いずれも否決された。

にもかかわらず〝移し替え〟は高校だけに留まらない。松井市長(大阪維新の会前代表)、吉村洋文知事(現代表)は年明けの2月議会でそれぞれ「広域行政の一元化条例案」の提案を目指す。成長戦略や水道、消防など約430の事務、財源約2000億円を府に移管するというもので、「都構想」の条例版だ。
松井市長や吉村知事は「約半数の賛成の声を尊重することも大事だ」と正当化しているが、府市の広域行政一元化は住民投票で問われた制度案の骨格部分。住民投票の結果には当然、法的拘束力がある。

また、松井市長は「広域一元化」とセットで「総合区」条例案も市議会に提案すると明言している。かつて公明が導入を主張していた「都構想」の対案だ。松井市長は「条例案に反対すれば、衆院選の大阪の選挙区に対立候補を擁立する」とけん制、公明を揺さぶる。

今年も残り10日に迫った週末の午後、大阪市北区の天神橋筋商店街にチラシ配りにいそしむ市民たちがいた。いてもたってもおれないと、寒空の下、30人以上が参加していた。
「広域行政一元化は都構想と同じ?」の文言が目をひくチラシは条例案の問題点をイラスト入りで解説する内容で、平松邦夫元市長らが共同代表を務める「大阪・市民交流会」が作成。「『都構想』にもう一度NO!」の一点で緩やかに集まった市民ネットワークだが、民意を覆す動きがすぐ始まったため、コロナ禍の街頭行動を余儀なくされた。

参加した女性は「どんな思いをして否決を勝ち取ったか……。涙が出るほど悔しいです。このままでは数の力で通ってしまうかもしれない。一人でも多くの市民に事実を知ってほしい」と危機感を露わにしていた。

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