コロナと介護 「うつす怖さ」緊張続く

新型コロナウイルスの感染拡大は介護現場に深刻な危機をもたらしている。避けられない「密接」「密着」。自分が感染させないか、感染しないか、不安はぬぐえない。特別養護老人ホームで働く大阪市西淀川区の交田真結(まゆ)さん(23)の話から見えてきたのは、高齢化社会を支える基盤である介護サービスの脆弱さだった。(矢野宏)

 

交田さんが勤務する特別養護老人ホームは京都市内にあるため、電車で片道2時間近くかかる。早出の日は午前5時半に自宅を出て、帰宅は午後7時過ぎ。遅出の日は午後10時を回る。次の日が早出勤務や日勤だと睡眠時間はほとんどない。

50人ほどの入所者はほとんどが認知症。朝から晩まで、食事や入浴の介助、排せつのケアなど、身体を寄せて行わなければできない仕事だ。

それだけに、大阪で新型コロナの感染者数が増えているのが気になるという。

「新型コロナに感染してしまうことより、誰かにうつしてしまうことが怖いです。行き帰りの電車の中で、無自覚の感染者がいるかもしれない。ウイルスを施設に持ち込むとしたら職員です。一人でも感染者が出ると、入所者の命にかかわります」

認知症の人はコロナを理解できず、施設内を歩き回る場合もあり、感染リスクはさらに高まる。それを避けるため、職員はマスク着用、手洗い・消毒、出勤前の検温などを徹底している。

入所者の外出を禁止し、家族との面会も制限した。閉じ込められた生活、身近な人と会えなくなったことで、入所者はストレスを募らせた。

「感情をコントロールできない人が増えました。突然、スイッチが入って、急に怒り出したり、泣き出したり。殴る、蹴る、かみつく、物を投げる。寄り添って話しかけても、手が付けられなくなる人もいました。私も傷つけられることがあり、『何もできない自分はこの仕事に向いていないのではないか』と思ったこともありましたが、先輩から『やめてほしいという思いを伝えることは間違いではないよ』とアドバイスされ、自分の中で『逃げ道』ができたように思います」

神経をすり減らしながらの勤務が続く。アドバイスしてくれた先輩も近く退職するという。交田さんが入社した3年間で辞めた正社員は5、6人。同期4人も半分になっていた。精神的に追い込まれて離職した人もいたという。

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