「大阪市廃止は危ない」学者の会がシンポジウム

大阪市を廃止し四つの特別区に分割する、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票まで1カ月を切るなか、「『豊かな大阪をつくる』学者の会」によるシンポジウム「大阪市『廃止』は、いかに『危ない』のか」が10月4日、大阪市中央区谷町で開かれた。サブタイトルは「住民投票における理性的な有権者判断の支援を目指して」。反「都構想」の論客である京都大の藤井聡教授(国土計画学・公共政策論)ら5人の学者がそれぞれの立場から「都構想」の危険性について語った。(矢野宏)

新型コロナ感染防止対策として収容定員を100人にしたため、入場できずに1階にある喫茶店などでネット中継を見守る市民もいた。

まず、藤井さんは「都構想」について「大阪市を廃止・消滅し、大阪市民が財源と権限を失い自治を失う論外の話だ」と切り出し、「大阪市が廃止されることで市職員3万5000人が行っている仕事を新たに設置される四つの特別区のほか、大阪府や一部事務組合にも振り分けなければならず、莫大なコストと混乱を招いて大阪市は衰退していく」と指摘した。

さらに、前回2015年5月の住民投票直後に大阪市民を対象に行った調査結果を紹介。

「『都構想』が実現された場合、『大阪市が廃止されて消滅する』ことを正確に理解していた人は8・7%だった」と述べ、「『都構想』を正しく理解している人の9割が反対し、誤解している人の6割が賛成していた。都構想の中身を知れば市民の多くが反対する」と力説した。

立命館大の森裕之教授(地方財政学)は「『都構想』には制度的欠陥があるとともに、新型コロナの中で不要不急の統治機構改革を行うことは政治的な暴挙だ」と批判した。

「都構想」が実現すればどうなるのか。「市の財源の3分の2が大阪府に吸い上げられ、どれだけ特別区に配分されるかは府議会が決める。しかも、四つの特別区になるとコストもかかるので、各特別区ではこれまで以上の予算削減が進められ、身近な福祉や教育などに影響が出てくる」と訴えた。

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