「ちむぐりさ」「ドキュメンタリー沖縄戦」 島の過去と今 2作公開

「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」。戦後75年のこの夏、沖縄が置かれた状況を描いた二つの長編ドキュメンタリー映画が全国で公開される。

「ちむぐりさ」は沖縄テレビ放送アナウンサーの平良いずみさんが監督。米軍基地問題に揺れる沖縄の現状を、石川県珠洲市出身の坂本菜の花さんの目線で追った作品だ。

主人公の坂本さんは中学時代に修学旅行などで訪れた沖縄に興味を持ち2015年、15歳で那覇市内のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」高等部に入学した。沖縄の歴史や文化も学ぶユニークなカリキュラムで、放課後は、沖縄戦などで学ぶ機会を奪われたお年寄りが通う夜間中学になる。坂本さんはお年寄りたちと学校生活を共にしながら、生の戦争体験を胸に刻んでいく。

坂本さんの在学中も米軍による事件事故が相次いだ。米軍属による女性殺害・遺棄事件、オスプレイ墜落、幼稚園や小学校への米軍ヘリ部品落下。辺野古では県民の思いに反して埋め立て工事が強行されていく。現場に赴く坂本さんにカメラが寄り添う。

平良さんはニュース番組でキャスターを務めるとともに沖縄の現実を数々のドキュメンタリーにしてきた。しかし、県外に伝わらない。認識の差が埋まらない。悩んだ末にひらめいたのが坂本さんだった。

15年に「珊瑚舎スコーレ」の夜間中学をテーマに制作。その頃入学したのが坂本さんで、学内には彼女が石川県の地元紙に寄稿した切り抜きが掲示されていた。「平易な言葉なのにストレートに伝わる。すごい子が入ったな」と印象に残っていたという。

18年5月にテレビドキュメンタリーを制作。卒業後、郷里に帰った坂本さんや家族にも取材、映画化した。「ちむぐりさ」は沖縄の言葉で、誰かの心の痛みを自分の悲しみとして胸を痛めること。平良さんは「テレビを見る層とは違う人たちに見てほしくて映画にした。特に若い人に見てほしい」と話している。

「ドキュメンタリー沖縄戦」は、原発事故をテーマにした「朝日のあたる家」などの作品で知られる太田隆文監督の初の長編ドキュメンタリー。浄土真宗西本願寺総合研究所が16年から沖縄戦の調査研究を開始、証言の聞き取りなどを進める中で、映像化も動き出したという。

渡嘉敷島「集団自決」の生存者、吉川嘉勝さんや座間味昌茂さん、対馬丸事件の生存者、平良啓子さんら沖縄戦体験者の証言に沖縄戦研究者の吉浜忍さん、川満彰さんら専門家の解説、米軍が撮影した記録フィルムを織り交ぜた。 「それまで沖縄戦について何も知らなかった」という太田監督。その自身に照らし、「知識のない人が見てもわかるような作品にした」という。「コロナの政府の対応に、沖縄戦が重なった。原発事故もそう。『大本営発表』当時のまま。過去を見ることで今の時代も見えてくる。いまの日本を見つめる映画だと感じている」

「ちむぐりさ」は7月25日から大阪・第七芸術劇場など全国で順次公開。「沖縄戦」は7月31日から新宿Ksシネマ、8月1日から第七芸術劇場など全国で順次公開。

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