コロナ解雇2万人超 手作りキムチで再起図る

朴さんは十数年にわたってキムチの製造販売をしていたことがある。休業を言い渡された翌9日には「このままでは路頭に迷う」と、店が再開されるまでのつなぎと考え、水キムチを作って売ろうと思い立ち、材料を買いに走った。

白菜、大根、キュウリ、リンゴ、ニンニク……。水キムチとは、もともと韓国の宮廷料理で、赤いキムチに比べて野菜の種類も乳酸菌も多い発酵食品。あまり辛くなく、汁ごと食べられるのが特徴だ。朴さんが大阪・十三で飲食店を開いていた時の看板メニューの一つだった。

2カ月待ちの人気

長年の試行錯誤の末、自分の味にたどりついた水キムチ。「知り合いにだけでも買ってもらえれば」と、朴さんはツイッターで注文を呼びかけた。それを見たかつての常連さんが通販サイトを整えてくれ、全国から注文が相次ぐようになった。今では製造と発送作業に追われ、注文してから届くまで2カ月待ちという人気ぶりだ。

とはいえ、このままキムチ屋をするのか、再就職を考えるのか迷っているという。

「国民健康保険に切り替え、失業したことを改めて意識しました。それでも会ったこともない人からも注文があり、『身体を大切にしてくださいね』という励ましがありがたいです。応援してくれる人のお陰で頑張ることができています」

決断はまだ先のことになりそうだ。

取材を終え、あらためて朴さんのツイッターを見ると、こう書き込まれていた。

「最近は眠れるようになってきた。4月から5月の半ばまでほんまにちゃんと寝れんかった。解雇された怒りと不安。これからの生活に対する不安。54歳の俺に次の仕事が見つかるかって不安。不安に押しつぶされて俺がダメになるんちゃうかって不安。自分が病気になるんちゃうかって不安。不安を全部消せるはずはない。けど、ちょっとずつでも前に進めば不安感もちょっとは減ると思う。
一度はキムチ作りをやめたけど、これでやっていきたいと思い始めています、失業した一時のしのぎではなくて」

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