健康・衛生面に課題
いわき市内で避難所での生活を余儀なくされているのは154世帯325人(11月14日現在)で、その半数近い75世帯166人が避難生活を送っている市内最大の避難所「内郷コミュニティセンター」を訪ねた。
「今朝も集団生活がなじめないと言って70歳代の男性が一人、ここを出て被災した自宅へ戻られました」
被災地支援に入っている「ピースボート」の井上綾乃さんは心配そうに振り返る。
ここに避難していた73歳の女性がトイレで嘔吐し息苦しさを訴え、翌日亡くなっている。死因は肺炎。この女性は台風19号で自宅が浸水し、その直後から避難生活を続けていて、センターが3カ所目の避難所だったという。
ホールをのぞくと、段ボールベッドが支給されて雑魚寝は解消されていたが、支給される食事は相変わらず、パンやおにぎり、弁当で野菜不足になりがちだという。
「これから冷え込みが厳しくなる中で、体調を崩す人が増えるのではないでしょうか。ここは誰もが使うことができる施設なので、誰がどんな菌を持ってくるかわかりません。インフルエンザやノロウイルスなどの感染も心配です」
井上さんは防災士の資格も持っている。現状に触れ、「いわき市は被害が大きかったのにあまり報道されていないためか、『忘れられた被災地』で人手が足りません。忘れないでほしい」と訴える。
避難者の一人、酒谷和美さんは60代。被災した自宅で猫に餌をやって戻ってきた。
夏井川の氾濫で、一人で暮らしていた幕ノ内の市営住宅も床上浸水したため、着のみ着のまま外へ飛び出した。「冷蔵庫もテレビも食器も、箸にいたるまで生活用品のすべてを失いました」
一から買い揃えるのも大変だが、それも新居が見つかってからの話だ。みなし仮設住宅の抽選も外れ、今後のメドが立たないという。
「いつここを出ることができるのか。1年先か……、2年先になるかもしれませんね」