「天皇制と部落差別」著者の上杉聡さん 令和に「在り方」考える

天皇退位に伴い、5月1日に新天皇が即位し、元号も「令和」に改まる。新時代の幕開けに歓喜する祝賀ムードに包まれても、昭和や平成に残した「負の遺産」が消えるわけではない。そもそも天皇制とは何か、改元とは……。「天皇制と部落差別」(解放出版社)や「日本会議とは何か」(合同出版)の著者で、元大阪市立大教授の上杉聰さんは「天皇制と部落差別は相似形だ」と指摘する。4月12日に開講した「うずみ火講座」を振り返り、天皇制はもとより、令和の意味についても考えてみたい。(矢野宏)

 

この日の演題は「天皇に人権を――天皇制の終わり方」。上杉さんは「天皇制を『制度』と『個人』とに分けて考えたい」と切り出し、「今の天皇が嫌いではありません。天皇個人に対し憎しみを持つことと、天皇制を憎むこととは別です。天皇個人も天皇制の犠牲者、この制度から解放してあげてはどうだろうか」と呼びかけた。

まず、上杉さんは、新元号発表に違和感を覚えたという。

「平成改元にはなかった首相会見で『働き方改革』『一億活躍社会』などと発言、所信表明を聞いているようでした。これまでの元号の慣習を破って国書から選んだとナショナリズムをあおり、自分が決めたと言わんばかり。新元号発表の『演出』で政権浮揚を図る狙いがあったのでしょう」

共同通信社が4月3日に発表した世論調査で、横ばい傾向だった内閣支持率は9.5ポイント上昇し、5割台を回復。「令和」についても73.7%が「好感が持てる」と答え、出典に日本古典の万葉集が採用されたことを「評価する」は84.6%だった。

令和の引用元は、「万葉集」巻五の「梅花(うめはなの)歌三十二首」の序の「初春令月、気淑風和」(初春のよき月に、さわやかな空気のなか、風邪が柔らかく吹いている)」という一文。

天平2(730)年の正月、大宰府の長官(太宰帥)だった大伴旅人が大がかりな宴会を開き、集まった役人たちが詠んだ梅の花にまつわる和歌まとめるとともに、漢文の序を付けた。ちなみに旅人は、万葉集の編者の一人である大伴家持の父。

安倍首相は元号発表会見で、万葉集について「わが国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書」と紹介し、「厳しい寒さのあとに春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人があすへの希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、令和に決定した」と語った。

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