4月1日、大阪の「広域行政一元化条例」施行

大阪市の広域行政を大阪府に一元化する条例が成立し、今月1日に施行された。「大阪維新の会」の看板政策である「大阪都構想」が昨年11月の住民投票で否決されたため、それに代わる看板を作る目的で持ち出したものである。

その住民投票で何が問われたのか。

問われたのは「大阪都構想」の是非ではない。というのも、賛成多数であっても「大阪都」にはならないからだ。では、何が問われたのか。ポイントは二つ。

一つは、大阪市を廃止し、四つの特別区という独立した自治体に再編すること。

二つ目は、政令指定都市として大阪市が持っている広域行政の権限や財源を大阪府に委託すること。

住民投票でこれらが否決された。

住民投票での否決を受け、あいさつする松井市長

つまり、大阪市民は「政令指定都市としての大阪市の存続を求めた」。もっと具体的に言うと、「政令指定都市としての権限や財源を使って、大阪市の発展や市民生活の向上を図ってほしい」と願った。

ところが、住民投票から4日後、大阪市の松井一郎市長は「大阪府と市の二重行政は解消すべきだという民意が示された」と言い出した。

住民投票には法的拘束力があり、賛成が1票でも多かったら大阪市は廃止されていた。「勝つまでジャンケンを仕掛けておいて、負けたからルールまで変えよう」というもの。

今回の一元化条例は、市民の民意を無視する制度変更であるというのが大きな問題である。

 

次に、条例の中身だが、どんな権限を大阪府に委託するのか。

大阪市が持っている再開発や高速道路整備などの都市計画権限などで、それに見合う委託費も大阪市が大阪府に支払うという内容だ。

今回は政令指定都市の主要な権限が道府県に移るのは全国でも初めてのケースだ。というのも、事務委託される権限の多くは、国や都道府県から市町村へ委託されている。

つまり、今回の一元化条例の問題点の二つ目は「地方分権の流れに逆行している」という点だ。

 

そもそも、議会の議決で決めるのなら何のための住民投票だったのか。

2015年には32億円、昨年11月の住民投票でも10億円以上の税金が使われている。さらに、2013年4月以降、都構想にかかった費用は100億円ともいわれている。そのお金をコロナ対策に使っていれば、多くの府民や市民が救われたのではないか。

問題はまだある。

住民投票で否決されてから5カ月足らずでの成立。しかも大阪府議会と大阪市議会での審議は1カ月にも満たないこと。あまりにも急ぎすぎ。「条例がなぜ必要なのか」「市民の暮らしにどう影響するのか」など、市民への説明が十分になされたとは思えない。

条例案が可決した3月26日の大阪市議会を傍聴した。賛成は維新と公明の57人、反対は自民と共産など24人だった。

なぜ、こうも急いだのか。条例が成立した後の記者会見で、松井市長はこう語っている。

「広域一元化はこの10年間ずっと議論してきた。最終的には多数決で物事を動かしていくのが政治家の役割だ」

だが、ここまで急いだ理由として、「住民投票で敗れたため、衆議院選挙までに『都構想』に代わる看板を作る必要があったのではないか」との見方がある。

それに、公明党が賛成に回ったのも「反対したら、次の衆議院選挙で、公明党現職がいる選挙区に対抗馬を出す」と、松井市長に言われていたからだ。

党利党略で自治体の根幹にもかかわる重要な制度設計がなされたとなると、これは由々しき問題ではないか。

 

さて、今回の一元化条例は成立・施行されたから終わりではない。

「都構想」と比べると、一元化の範囲が限定的だ。大阪市が持つ水道や消防などの幅広い権限はそのままだからだ。

政治家が、自分たちに都合の良い法律を成立させる時に使う常套句がある。

「法律は小さく生んで大きく育てよ」

市民や府民が監視を怠ると、知らぬ間に、政令指定都市としての大阪市がなくなっていたということにもなりかねない。忘れることなく、諦めることなく、今後も目を光らせることが自分たちの命や暮らしを守ることにつながる。

 

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