玉本英子さん講演「IS支配地域はいま」

私は、IS支配前からシンジャルで取材していた。現地の友人から日本の私に「助けて」と突然電話があったのは2014年8月だった。「武装組織が自分たちの村に来て、人々を殺そうとしている。自分たちは近くにある山に逃げたんだ」と。夏は45℃にもなるイラクの岩山。9日後にイラク軍などが、空から水や食料を落とし、友人らは何とか助かったが、老人や子供200人が亡くなったという。

だが、捕まった人達もいる。ISは性別で分け、男には改宗を迫り、拒否すると殺した。女性と子どもは戦利員。支配地域に連行し戦闘員に売った。女性は性奴隷。婚姻関係がないと性関係を持てないので強制的に結婚させた。

私は性奴隷にされた女性たちの取材をしてきた。19歳の女性は妊娠中で8カ月の乳飲み子を抱えていた。夫は改宗を拒み殺された。彼女はモスルの結婚式場ホールに入れられた。ヤズディの女性が1000人。奴隷市場だった。彼女は、結婚しないと殺すと言われ、戦闘員の一人にしぶしぶついていった。

2週間後、耐えきれず乳飲み子を抱いて夜中に逃亡した。明け方、庭先で水まきをしていた中年男性にいちかばちか助けを求めた。「ISに見つかったら殺される」と。男性が家に入れてくれ彼女は何とか助かった。彼女はいま、ドイツ政府のプログラムに応じ、子ども2人と義理の母と4人でドイツで暮らしている。

昨年私は彼女を助けた家族をモスルで取材した。父、母、息子の3人家族。父親は彼女を見てすぐ家に入れた。両隣がISの幹部の家だったからだ。絶対何もしない、大丈夫だと何度も言って怯える彼女を安心させようとした。親戚の家に電話をさせ、検問所を越えるための偽の身分証明書を自腹で作ってやった。

逃げた女性はたくさんいる。しかし密告され捕まり半殺しにされた。殺された人もいる。助けるという行為も悪魔崇拝。捕まるのは当たり前。シリアでは斬首された例がある。それくらい命がけ。モスル市民に、この家族の話をするとみな「ありえない」「無理」と。

私もそうだと思う。でも彼らは違った。私は3人に「なぜできたのか」聞いた。そうしたら「人間ですから」と。やるべきことをやったにすぎないという返事だった。

言うまでもないがイスラム教徒=ISではない。宗教などを越え、人としてあるべき行動を取れる人たちがいたということに驚く。
ではISはどんな人か。外国人戦闘員になるのは2つのケースがある。宣伝映像を見て。もう一つは私が取材したウイグル人のように、難民としてトルコに行き、そこで「シリアでいい話がある」と誘われたケースだ。

1

2

3

関連記事




ページ上部へ戻る