京アニ放火殺人事件 容疑者の足跡を追う

懲役3年6カ月の実刑となり、水戸刑務所や栃木県の民間刑務所に収監され、16年1月に出所した。服役中は刑務官に暴言をはき、幻聴を訴えて精神安定剤を服用していたという。出所後は埼玉県庁近くの更生保護施設「清心寮」に入所した。訪れたが、予想通り「個人情報」で話は聞けなかった。

退所後、さいたま市見沼区の「レオパレス」へ移った。隣家の男性は青葉容疑者を知っていた。「時間的にすれ違うことが多くトラブルはなかった。夜に何か、ゴーンという感じのゲームの音のようなのが聞こえてくることはあったけど、私が仕事で疲れて寝てしまっていたのか気にしなかった」と話す。

だが京アニ事件を起こす4日前、騒音の発生源と思いこまれた同じアパートの男性が青葉容疑者に胸ぐらをつかまれて「お前殺すぞ。失うものは何もないんだ」などと凄まれて恐ろしくなり転居した。誰かれなく食ってかかるわけでもない。

京都府警によるこのアパートでの捜索では、破壊された長さ1メートルの高級スピーカーが押収された。持ち物も騒音源と思ったのか。

なぜ、青葉容疑者は京都アニメーションを狙ったのか。実は同社の小説募集に応募したが、形式的不備で落選した。警察に捕り押さえられた際、青葉容疑者は「俺の小説をパクりやがって」と言った。八田英明社長は「これまで製作された作品と同一だったり、類似したものはない」と話す。

とはいえ、昨年秋には「最初から原稿を叩き落として裏切る気だった」「爆発物を持って京アニに突っ込む」などとネット掲示板に書き込んでいたとみられる。京アニの監督を名指しする内容もあるという。小説は支離滅裂ではなく「盗用」との思い込みか。「思い込み」といっても勘違いのレベルではない。強盗事件で捜査官に、中学生の頃、周囲から「寄ってくるな」と言われているような幻聴があったと告白していた。父の自殺など衝撃的なことが性格を変えただろうが、妄想など何らかの疾患がありそうだ。騒音トラブルも放火殺人も「思い込み」からのようだが、結果の差はあまりにも大きい。

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